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金融庁 金融審・損害保険業等に関する制度等WG第4回 主な論点

 金融庁は2024年11月15日、金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」の第4回会合が開催された。企業内代理店のあり方など五つの論点(❶企業内代理店のあり方、❷乗合代理店における比較推奨販売の適正化、❸損害保険分野における自主規制のあり方、❹火災保険の赤字構造、❺第3回WGでの議論を踏まえた考え方の再整理)について討議が行われ、企業内代理店については、特定契約比率規制の見直し案として、一部の損害保険代理店に経過措置として適用されている特例的な計算方式の撤廃や特定者の範囲拡大などが提示された。

 企業内代理店(機関代理店)とは、保険業以外の事業を営む大企業などの子会社代理店を指し、2024年6月に公表された「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書では、「損保代理店である一方、損保会社の法人契約者と人的・資本的に密接な関係にあることから立場が不明確であり、今回の議論の発端となった大手損保による企業保険分野での保険料調整行為事案において、独占禁止法の抵触リスクを高める一要因になるおそれがある」と指摘している。

また、企業内代理店の中には、損保会社が適切に指導等を行うことが困難であるため代理店としての実務能力の向上が図られていない半面、グループ企業などに保険募集を行って一定の手数料収入を得ることによって存続している実態もあり、その結果、企業向け保険市場における保険仲立人や他の代理店の参入の妨げとなって競争環境に歪みが生じているとして、企業内代理店の立場の明確化や情報共有ルールの策定、実務能力の向上、自立の促進などを求めていた。

 一方で、同報告書や第1回WGでの各委員の意見として、グループ企業で働く従業員向けの団体保険等の提供を通じて福利厚生の担い手になるとともに、グループのリスク状況をよく理解している立場からリスクマネジメントを進める上で重要な機能を持つほか、グループ外への保険募集を拡大させる方針を掲げるなど、自立を図ろうとしている企業内代理店も存在しており、果たすべき役割や意義がグループによって異なることから、多様なあり方を認めてよいのではないかといった指摘もあった。

 これらの意見や金融庁が企業内代理店などに行ったヒアリング結果を踏まえ、事務局では、企業内代理店の自立を促す観点から、実質的な保険料の割引・割り戻しを防止する目的で損保代理店に課している「特定契約比率規制(注1)」を見直して、経過措置の撤廃や「特定者」の範囲拡大、同規制の適用除外などといった対応の方向性が示された。

 (注1)特定契約比率規制とは、損保代理店が自らと人的・資本的に密接な関係を有する者を保険契約者等とする保険契約(特定契約)のボリュームを一定割合に制限するもので、取扱保険料全体の30%を超えれば速やかに改善するよう保険会社による指導が求められ、50%を超えると実務上は各保険会社の内務規則等に従い、代理店委託契約の解除等の措置が講じられる。また経過措置とは、現行の規制枠組みが設けられた際に、1996年(平成8年)3月31日以前に設立された等の要件を満たす一部の損保代理店に適用されている特例的な計算方式(旧基準)で、特定契約の対象を火災保険、自動車保険および傷害保険契約の3種目に限定することや、特定者が複数いる場合に特定契約に係る保険料を各特定者の保険料の合算とせずに、特定者ごとの保険料としてそれぞれ特定者の割合を計算して、そのうち最も高い特定契約比率とすることを定めている。

 

今回、経過措置が設けられてから四半世紀以上が経過し、その間に賠償責任保険やサイバー保険といった新種保険の需要増加など近年の企業向け保険市場の環境が大きく変わりつつあることから、経過措置を撤廃して基準を統一するとともに、旧基準が適用されていた代理店には3年程度の準備期間を設定することが提案された。

 また、特定者の範囲拡大については、現行規制の「特定者」の範囲である「法人である損保代理店と役職員の兼務関係(非常勤、出向および出身者を含む)がある法人」「法人である損保代理店への出資比率が30%を超える者等」を「連結決算の対象となるグループ会社の範囲全体」に見直す案を示した。

 一方、実態調査で親会社などとの保険契約の割合が高くても、実務能力の高い代理店があることが分かり、規制が一律適用となれば、こうした代理店の活動が難しくなる恐れがあるため、「特定契約比率規制の適用除外」として、

  • 取り扱う保険契約の規模に応じた、グループ外を含めた契約者等の保護を確保するのに必要な態勢が整備されているなど、保険代理店として十分な実務能力を有しており、親会社等からの自立が図られていると認められていること
  • 企業内代理店が受け取る手数料が保険代理店の業務品質・手数料の妥当性の基準をもって保険会社が当該代理店と合意するなどの手法により、当該代理店が実際に提供する役務に見合った額となっているなど、親会社等を保険契約者とする保険契約に係る保険料の実質的な割引が生じていないと認められること

といった二つの要素を考慮して問題ないと考えられる企業内代理店については、同規制の適用除外とする案が提示され、各委員に検討を求めた。

 会合ではこのほか、乗合代理店における比較推奨販売の適正化(注2)、損害保険分野における自主規制のあり方、火災保険の赤字構造などが議論された。

(注2)金融庁、損保・代理店のなれ合い是正 特定会社の推奨禁止(2024年11月27日日経記事)      

金融庁は、損害保険会社と販売代理店のなれ合い是正を図る。自動車ディーラーなど複数の損保商品を扱う乗り合い代理店に対し、代理店の都合で推奨する保険商品を選ぶことを原則禁止する方針だ。顧客軽視の販売を防止する。

自動車保険の販売などでは、店舗ごとに特定の損保の商品をほぼ独占的に顧客に推奨する「テリトリー制」と呼ばれる商慣行がある。推奨する損保の商品は代理店への人材派遣や代理店からの物品などの購入実績などで決められ、顧客の意向が置き去りにされてきた。

乗り合い代理店の保険販売では「この商品の事務に精通している」などの推奨理由を示せば保険代理店の都合で商品を提案できる規則がある。しかし、きちんと説明せず商品を販売したり、顧客軽視の商慣行を生む温床になっていたりすることから、金融庁は同規則を削除する方針を固めた。

金融庁は金融審議会(首相の諮問機関)での報告書の取りまとめを受け、来年中にも監督指針を改定する。準備期間を経て適用になれば、乗り合い代理店は顧客の意向を確認し、それに沿って商品を推奨するか、取り扱う全商品を隔たりなく説明して顧客に商品を選んでもらう必要がある。

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