東京海上日動火災保険と富士通は2024年10月にも、世界の自然災害リスクを分析する企業向けサービスを始める。
既に東京海上と富士通は2024年1月から国内供給網の災害リスクを分析するサービスを始め、8月までに複数社が試験導入しているが、供給網が国内にとどまる企業は少ないため、今回リスク分析の対象を欧米やアジアなど海外に広げる。
東京海上が民間の調査会社などからデータを購入し、海外で起きる可能性がある地震や豪雨などの災害情報を分析する。分析したデータを顧客企業の生産拠点やその取引先の位置情報と照らし合わせ、各地域の災害リスクを富士通のクラウド上のハザードマップなどで示す。
災害時に自社の生産拠点の状況を把握するシステムは一定程度普及しているが、調達先も含めた供給網全体の災害リスクを把握できるのが今回の特徴だ。部品や材料の供給が滞れば、自社工場に被害がなくても生産や出荷ができなくなる恐れがある。国内外に供給網を持つ企業は調達先と自社拠点の両方のリスクを管理する必要がある。
また、東京海上は顧客企業に対し、海外供給網のリスクを可視化することで、想定される災害の種類や規模に応じた保険への加入を促す。例えば、ある地域で発生する可能性があるハリケーンの規模や頻度を踏まえ、想定される被害度合いに応じた補償がついた保険商品を勧めることを想定している。東京海上の現地法人との契約を促したり、外資の保険会社からの再保険を引き受けたりして保険事業の収益力を高める。
併せて東京海上が重視するのが事故を未然に防いだり被害を減らしたりする「事前領域」のサービス充実だ。企業にとっては事前のリスク分析で損失を回避できる効果が見込める。保険会社にとっても損害率が下がれば収支改善が期待できる。
被災の可能性が高まった場合は企業にアラートメールを自動配信する。調達先には被災状況の入力を求め、供給網全体の状況をリアルタイムに確認する。サービスは導入企業だけでなく、その取引先も利用できる。
代替ルートの策定や供給網の整理に生成AI(人工知能)の活用も探る。富士通は供給網の可視化が「温暖化ガスの削減やサーキュラーエコノミー(循環経済)の構築にも役立つ」とみる。東京海上も二酸化炭素(CO2)排出量の相殺やリサイクルにかかる追加コストを補償する次世代の保険商品の開発も視野に入れている。