<日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツと業務提携し、同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し掲載している。>
世界の大手保険会社は補償するリスクと同様に多様なテックの買収・投資・提携を進めている。こうした動きは保険業界全体の戦略を示している。
例えば、米保険大手トラベラーズはサイバー関連インシュアテックを買収したことで、新規事業の保険料収入が34%増えた。テック分野と連携することで、高度化するサイバーリスクに備えるほか、自動車分野の保険で活用している。
今回のリポートでは、損保リーダー15社の買収・出資・提携データを分析し、過去3年の活動から優先度の高い7つのテックをまとめた。
1.Cyber risk 2.Auto tech 3.Property tech 4.Embedded distribution 5.Climate tech 6.Customer interaction tech 7.Generative AI
ポイントは以下の通り。
1.損保大手が最優先している分野は「サイバーリスク」と「オートテック」だ。経営陣も両分野に広く注目している。
2.活動件数が多いのはアクサと米ステート・ファームだ。いずれも優先戦略を支えるコーポレートベンチャーキャピタル投資に力を入れている。
3.大手による「生成AI」分野の取引や提携はまだほとんどない。つまり、どの損保にも先発優位を得るチャンスがある。
<Cyber risk>
経営陣によるサイバー関連の保険とリスクへの注目の高まりに伴い、今回分析した損保大手15社のうち11社が過去3年でサイバーリスク分野の取引や提携を実施していた。これはサイバー攻撃が高度化かつ頻発化し、サイバー市場が成長していることに基づいている。さらに、サイバーリスク分野での買収・提携件数が最も多かった企業は4社(アクサ、アリアンツ、イタリアのゼネラリ、トラベラーズ)に上った。
<Auto tech>
「オートテック」は自動運転車、テレマティクス(運転者の運転特性や走行距離を保険料に反映させた保険)など、自動車業界に関するテックだ。この分野への取引・提携件数は2番目に多かった。過去3年間にこの分野で動きがあった企業は9社に上った。背景には、運転手の安全性や価格リスクを改善するデータを保険会社に提供できるコネクテッドカー(つながるクルマ)の進化がある。
<Embedded distribution>
チャブの提携14件のうち9件は、「組み込み型販売」の分野だった。これは同社が掲げる「直販とD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)プラットフォームとの提携」など広範な販売チャネルに力を入れる方針に沿っている。