東京海上日動は2022年10月、全国労働者共済生活協同組合連合会(以下「全労済」)と共同出資会社(「共同事務調査サービス(注1)」)を設立する。東京海上のノウハウを生かし、全労済向けに自動車共済や火災共済の損害調査や共済金支払いに使う新システム(注2)を開発する。損害保険会社が共済のシステム開発を受託するのは初という。
(注1)「共同事務調査サービス」は資本金4億円で、出資比率は東京海上が80%、全労済が20%。システム開発費は数百億円とみられる。2025年度の稼働をめざし、対象を慶弔共済や個人賠償責任共済などに広げることも検討する。
(注2)同損害調査のシステムは、加入者から電話などで受けた事故状況を登録し、破損した車の写真や修理費の見積書などをもとに各事故について担当者を割り当てる。共済金を支払うまでの進捗管理も手がける。
<業務提携に至る経緯>
本格的な少子高齢化や人口減少等による自動車保有台数の減少、自動運転技術の進歩、頻度・規模が増す大規模自然災害の発生など、損害保険・共済を取り巻く事業環境が大きく変化するなか、損害保険・共済事業者には業務の一層の高度化・効率化が求められている。
こうした状況下、全労済では、大規模自然災害が発生した際に適正な共済金を迅速に支払するための体制整備や、デジタルテクノロジーの活用など、損害調査業務における品質や生産性の向上を経営課題と認識し、損害調査に係る業務プロセスおよびそれを支えるシステムの抜本的な再構築等について検討してきた。
一方、東京海上日動では、損害調査に係るシステムの開発以降、システムの改良やデジタルテクノロジーの導入など業務品質の向上や効率化を進めてきたが、事業環境の変化や将来を見据え、利用者利便や業務効率の向上に資する更なる投資を進めることや、これまでに保険本業で培ってきた様々なノウハウ等を活用した新たな収入機会を創出することなどを検討してきた。
両者は過去から幅広く意見交換を重ね、信頼関係を育んできた。そのような中、両者の課題解決に向けた取組みは、共済と保険という垣根を越えて連携することで、それぞれが単独で取組みを進める以上に効果を得られるのではないかと考え、具体的な連携の在り方について踏み込んだ協議・検討を進めてきた結果、業務提携するとの結論に至った。