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住宅ローン、「団信」競争に熱(2022年7月29日日経新聞の記事を中心に)

 住宅ローン業界で、返済中に病気になったり亡くなったりした場合にローン残高がゼロになる団体信用生命保険(団信)の競争が熱を帯びている。

 固定金利は上昇してきた一方、政策金利に連動する変動金利は優遇拡大による実質的な引き下げ合戦が続く。各行とも限界に近づき、競争の舞台が団信に広がってきた。

 KDDI系でインターネット専業のauじぶん銀行は5月、がんになった場合に残債が全額保障される「がん100%保障団信」の上乗せ金利を引き下げた。通常金利に年0.2%の上乗せだったところを0.1%とした。2021年7月から同様に0.1%に引き下げたPayPay銀行や、ソニー銀行と同じく業界最低水準となった。

 団信とは、住宅ローンの契約者が返済の途中に亡くなった場合などに、以後のローン残高がゼロになる保険商品だ。金融機関と保険会社が契約する。金融機関が保険料を負担し、万一の際は保険会社が保険金を支払う。亡くなっても家族に家を残すことができ、金融機関もローンの返済が滞っては困るため双方にメリットがある。

 基本の団信は死亡または高度障害状態になったときに保険金が支払われる「一般団信」。加入が必須となる代わりに上乗せ金利もないケースが多い。がんと診断されたら残高がゼロになる「がん団信」や、脳卒中なども含む「3大疾病保障」など、0.1~0.3%程度の上乗せ金利を払って入る特約商品も多様だ。

 大手行の担当者も頭を悩ませる。保険料は金融機関が負担するため、契約者への上乗せ金利の引き下げは銀行の身を削ることを意味する。店舗を構える分、採算面でネット銀行より不利だ。

 大手行としての実績や手厚い相談体制などコストに勝る部分があるが、例えばみずほ銀行は8大疾病の主力商品で、一般的にはローン契約時にしか申し込めないが、途中申し込みや途中解約を可能にするなどで柔軟性を高めている。

 世界的な金融引き締めで国内の長期金利も上昇し、長期金利に連動する固定型は上昇傾向が続く一方で、政策金利と連動する変動型は各行こぞって優遇幅を広げてきた。「金利競争が激化し引き下げ余地が小さくなっている。次は団信などの付帯サービスということだろう」と指摘する関係者も多い。

 ただ、お得に見えても「何日以上の入院が条件」「〇〇という病気は対象外」など細かく条件が設定されるケースもある。顧客にとっては、長期返済が続く大きな買い物であることに変わりはない。安さで顧客を引き付けるだけでなく、個々の家庭にあった選択ができるよう丁寧なサポート体制の必要性はより高まりそうだ。

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