三井住友海上火災保険は2023年までにM&A(合併・買収)に最大5000億円を投じる計画だ。北米の海外損保会社などのM&Aを手がけるためのファンドをつくる。企業経営者の賠償責任向けなど「スペシャリティ」と呼ぶ特殊な分野の保険が発達する北米の損保市場を取り込む。国内事業の環境が厳しいなか、海外に活路を見いだす。
ファンドの資金は自社の余裕資金を軸に検討する。ファンド形式をとることによって、機動的に買収に動けるようにする。
海外M&Aには慎重な姿勢を示していたが、方針を転換する(注1)。台風など自然災害の多発で保険金の支払額が膨らみ、国内の火災保険事業は10年連続で赤字を計上。米国での買収は、中核の保険事業で(リスクの)分散効果を得る狙いがある。
(注1) 三井住友海上やあいおいニッセイ同和損害保険を含むMS&ADインシュアランスグループホールディングスの正味収入保険料は国内の自動車保険と火災保険向けが5割以上を占める。海外を含む新種保険の割合は小さく、北米展開でも競合に出遅れていた。
米国の損保市場は世界の4割を占める最大市場で成長率も高い。日本勢による北米市場への進出は、東京海上ホールディングスが先行する。M&Aによって生じた損害を補償する特殊な保険を日本向けにアレンジして発売するなどの実績がある。
三井住友海上の海外M&Aでは16年に英国の損保大手アムリンを約6400億円で買収した。ただ、英ロイズ事業の不振などで19年に約1700億円を減損処理した経緯がある。
企業向けのスペシャリティと呼ばれる特殊な保険が活発な米国で、同分野の引き受けノウハウを持つアムリンとの相乗効果をめざす。