東京海上ホールディングスの小宮暁社長は日本経済新聞の取材で、2023年度までに「海外利益が5割を超える見通しだ」と明らかにした。
すでに足元の海外利益は48.5%で推移しており「M&A(合併・買収)に頼らない内部成長だけで5割に到達する」と述べた。利益の過半を海外で稼ぐ体制を築けば国内損害保険大手で初となる見通し。
従来型の国内保険市場が頭打ちになるなか、海外で買収した保険会社の利益拡大を生かした成長を目指す。海外のウエートが高くなるなかで、小宮氏は「グループ一体経営を強化し、内部統制やガバナンスが最も重要だ」と強調した。
東京海上の海外利益は2000年代初頭は数%にとどまっていたが、その後、初の大型案件となる英キルンを買収した2007年度に21%に高め、米HCCインシュアランスHDを含めて総額2兆円にのぼる大型の海外M&Aを相次いで実行した。
損保業界では相次ぐ風水害で火災保険の赤字が続くなど国内事業の苦境が続く。小宮氏は「一つの地域で大きな自然災害が発生しても他の地域で補うなど、利益を相互に補完できるようにする」と述べた。
主力の火災や自動車保険に代わるサイバー保険など新種の保険は世界で3000億円規模の増収を見込む。小宮氏は「国内外の第一線の専門性やアイデアを共有して新商品やサービスを開発する」とし新しい保険に注力する考えを強調した。2020年には買収先のHCCが手がけるM&A保険を日本市場向けに投入した。
新種保険は売上高にあたる正味収入保険料ベースで3年後に2兆2500億円規模と2021年3月期比で約15%増え、全体の収入の4割程度になる見込みだ。国内で1000億円の増収を目指すほか、欧米で「スペシャリティ保険(注1)」を手がける会社を買収してきた効果が出ている。
(注1) スペシャリティ保険
医療・傷害保険、会社役員賠償責任保険、サイバー保険、航空保険、保証・信用保険、農業保険といった特定のリス クを対象とした保険を「スペシャリティ保険」と言い、独自の審査や引受能力が必要とされる。