デロイトトーマツグループは2021年3月、日本国内の上場企業343社の回答を基に企業のリスクマネジメント(注)調査(20年版)を発表した。50項目のリスクの中から「国内で優先して着手が必要と思われるリスク」を3つまで選択する問いで、上位10位は次の通りとなった。
順位 内容 割合
❶ 疫病のまん延(パンデミック)などの発生 34.4%
❷ 異常気象、大規模な自然災害 30.9%
❸ サイバー攻撃・ウイルス感染などによる情報漏えい 21.3%
❹ 人材流失、人材獲得の困難による人材不足 19.5%
❺ 製品やサービスの品質チェック体制の不備 15.7%
❻ 長時間労働、過労死、メンタルヘルス、
ハラスメントなどの労働問題の発生 12.5%
❼ 事業に影響するテクノロジーの変革 11.7%
❽ グループガバナンスの不全 11.4%
❾ 市場における価格競争 10.8%
❾ サイバー攻撃・ウイルス感染などによる
大規模システムダウン 10.8%
2020年はCOVID-19が猛威を振るい、企業の事業活動に大きな影響を及ぼしたことから、「疫病の蔓延(パンデミック)等の発生」が日本国内において優先して着手すべきリスクの1位となった。前回は24位(2.6%)と低く、感染拡大が続く新型コロナウイルスの影響を強く反映する結果となった。多くの企業において対応の見直しを迫られていることが見て取れる。
前回1位の「異常気象(洪水)異常気象(洪水・暴風など)、大規模な自然災害(地震・津波・火山爆発・地磁気嵐)」は2位と上位を保っており、災害リスクに対する企業の意識が引き続き高いことが分かる。
「サイバー攻撃・ウイルス感染等による情報漏えい」が前回5位から今回3位へ順位を上げた。COVID-19の拡大でリモートワーク導入企業が増加したことに伴い、多くの企業でサイバー攻撃、ウイルス感染等による情報漏えいに対する危機感が高まったと考えられる。
「長時間労働、過労死、メンタルヘルス、ハラスメント等労働問題の発生」が前回11位から今回6位へ上昇し、リモートワーク環境下での労務管理に関わる課題が明らかになった。
なお、新型コロナがもたらした影響について、最も多かったのは「売り上げ減少」で61%、次いで「従業員の感染」(54%)、「需要減少による稼働率低下」(22%)、「移動制限による駐在員などの赴任中止・延期や出張自粛」(21%)と続いた。
(注) リスクマネジメントとは
①リスクの「特定」「分析」「評価」→「リスクアセスメント」
損害を及ぼしそうな項目を洗い出し、リスクを特定し、その影響を分析、当該リスクが受容可能かを決定するためにリスクを評価する。このプロセス全体を「リスクアセスメント」という。
②「リスク対応」
通常は、リスクアセスメントの後で、優先度の高い順に発生を抑えたり損害を受けても影響を小さくとどめたりなどして「リスク対応」を行う。
③「リスクマネジメント」
リスクマネジメントとは、「リスクアセスメント」と「リスク対応」の2点をセットにした管理手法といえる。