東京海上ホールディングス(HD)は、2020年11月26日、カナダでの損害保険会社の設立に向けて、現地当局へ認可申請を行うことを明らかにした。
新種と呼ばれる賠償責任保険などで現地の非日系企業向けに保険の販路を広げる。国内で主力の自動車保険や火災保険が伸び悩む中でグローバル展開を加速し、成長市場の取り込みとリスクの分散を狙う(注1)。
東京海上日動火災保険を通じて60億円を出資し、新会社を設立する。関係当局の認可を条件に2021年にも設立し、22年の営業開始を見込む。企業向けの損保事業で開業から5年で数百億円の収入保険料を目指す。
社名は「東京海上カナダ」を検討している。会社役員賠償責任保険など「スペシャルティ(注2)」と呼ばれる新種の保険市場を取り込む。これまで東京海上日動のカナダ支店などを通じて日系企業などを中心に取引をしてきた。会社設立により、現地の保険会社との契約を望む非日系企業との取引拡大を見込む。
カナダの損保市場は約5兆円で世界8位とされる。過去5年は年率5%で成長しており、安定したビジネス環境で今後も市場拡大が見込まれる。
(注1)1996年の保険の自由化以降、3メガ損保を中心に、わが国の損害保険会社の海外進出が本格化している。その背景には、自然災害の多い日本国内だけでなくリスクを海外に分散させる重要性が認識され、更に、少子高齢化、人口減少社会が到来し、国内市場の伸びが期待できない中で、損害保険会社の経営戦略上、成長の見込める海外市場に事業拡大の舵を切ることが検討されている。
(注2)医療・傷害保険、会社役員賠償責任保険、航空保険、保証・信用保険、農業保険といった特定のリスクを対象とした保険を「スペシャリティ保険」と言い、独自の審査や引受能力が必要とされる。3メガ損保の海外事業戦略は、買収した欧米保険会社の持つ保険引受技術、資産運用技術を活用した保険事業の経営高度化、特にスペシャリティ保険を活用し、商品、販売面でのクロスセルなどによる収入保険料の獲得を目指している。