新型コロナウイルスの感染拡大の影響が損害保険会社に思わぬ形で表れている。外出自粛によって自動車事故が減り、2020年4~6月に自動車保険で支払った金額が大手4社の合計で前年同期から800億円も減った。
東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の4社の合算で、4~6月の自動車事故の保険金が前年同期比で865億円(17%)減った。損保ジャパンによると、事故の受付件数が23.3%減で、外出自粛で乗車機会が減った影響とみられる。
大手4社は20年1月に消費税の引き上げなどを理由に自動車の保険料を引き上げたばかりだ。大手損保は「コロナの影響を織り込んで自動車保険料を下げるかは慎重に検討する」との立場で、保険金の支払いが減っても保険料の低下にすぐにつながるかは不透明だ。
活動の自粛によって減ったのは自動車事故に限らない。東京海上は傷害保険も外出自粛による事故の減少で支払いが前年同月比56億円(約25%)減った。コロナによる自粛の間接的な影響が損保各社の業績に一時的にプラスに働いている。
一方、イベント中止の補償など新型コロナに起因する保険金の支払いは国内では限定的だ。4~6月期に三井住友海上は海外旅行保険やイベント中止保険の支払いで7億円、あいおいニッセイ同和は再保険の引き受けなどで14億円の支払いを見込む。
海外事業では企業の利益が減少した場合に補償する保険などで支払いが膨らんだ。MS&ADグループの英アムリンは4~6月期に116億円の支払いを見込む。東京海上HDは21年3月期の通期で新型コロナが1000億円ほどの減益要因になると予想する。海外の保険金の支払いと資産運用の悪化が響く。
SOMPOHDはコロナで21年3月期に140億円程度の利益押し下げを見込む。コロナが今秋までに終息に向かうことを前提に予想を立てている。新車販売の減少による自動車保険料の減少や、景気低迷による企業向け保険の減収など、予想に含めていない影響が今後出てくることも考えられる。