お知らせ

損保協会「令和3年度税制改正に関する要望・火災保険の異常危険準備金制度の充実」を発表

損保協会は7月16日、「令和3年度税制改正に関する要望」を発表した。

「要望」は全9項目にわたるが、そのうち「火災保険の異常危険準備金制度の充実(注)」をあげている。

(注)火災保険等に係る異常危険準備金制度について、異常危険準備金の残高上限(洗替保証率)を現行の30%から40%に引き上げるよう要望している。

 

 地球規模での異常気象による自然災害が世界各地で頻発、日本でも自然災害の激甚化により国民生活が大きく脅かされ、2018年の台風21号、24号および7月豪雨による支払保険金合計が1兆5,000億円を超え、2019年も、台風15号、台風19号による支払保険金合計が1兆円超に上った。

これにより、生活再建の一助となる損害保険の重要性がますます高まっている一方で、損保会社が平時に積み立ててきた異常危険準備金が大幅に取り崩され残高がすでに枯渇した状態となっていることを訴え、「今後も損害保険会社が、巨大自然災害にあっても確実に保険金をお支払いするという社会的使命を全うするためには、異常危険準備金の残高を早期に回復させていく必要があると考えている」としている。

 

<異常危険準備金が大幅に取り崩され残高がすでに枯渇した状態>

参考文献:「環境・持続社会」研究センター(JACSES) Briefing Paper Series No.24(2020年2月19日) 

損害保険会社は、単年度の収入保険料では吸収し得ない大型台風損害などをはじめとする異常災害における保険金支払いに備えるため、異常危険準備金の積立を行っている。その準備金の規模は 2011年3月期以降、概ね 7,000億円~8,000億円を推移していたが、2019年3月期には5,383億円、2020年3月期には3,850億円となり、約2年間で半減している。

この2年間における自然災害による正味発生保険金と異常危険準備金残高(火災保険)の減少額を調べたところ、異常危険準備金残高(火災保険)の年間減少額は、その年の発生保険金の約4割に相当することが明らかとなった。

過去2年間のトレンドをもとに、自然災害によってどの程度の発生保険金が生じると異常危険準備金がゼロになるかを計算したところ、異常危険準備金残高が1年間でゼロになる発生保険金の水準は9,167億円、異常危険準備金残高が2年間でゼロになる発生保険金の水準(年額)は 4,583 億円となった。つまり、今後、2018 年度に生じた規模の自然災害が 2 年連続で生じた場合には、異常危険準備金残高が枯渇することを意味している。

保険金支払の急激な増加を受け、損害保険各社は、2019年10月に住宅向けの火災保険料を6~7%、企業向けの火災保険料を4~5%引き上げた。さらに、2021年1月にも住宅向けを約5%、企業向けを約 4%引き上げることが見込まれている。気候変動による大規模自然災害の頻発化を受けて、今後も保険料値上げのトレンドは継続するものと考えられる。また、水害の多い地域の保険料負担を重くすることも検討されている。度重なる保険料値上げで保険契約者に負担増を求める中、損害保険会社自身の気候変動緩和への取り組みがより注目されることになるだろう。

 

キャプティブについて