日本生命保険は2020年6月にも疾病の予防を支援する事業に参入する。大手生命保険会社が金融以外の異業種に参入するのは初めて。新型コロナウイルスの感染拡大で健康への関心が高まっており、予防事業は異業種参入が相次ぐ。日生は生命保険のノウハウを生かして健康増進を後押しする。業界として保険契約の減少傾向が続く中、新事業で活路を開く。
疾病予防事業は日生初の有償サービスとして企業や自治体向けに糖尿病対策で始める。企業と契約し、従業員や職員に対して生活習慣を指導する。今後、疾病の対象も高血圧や精神疾患などに順次広げる方針。
日生は全国に5万人の営業職員を持ち、企業や自治体との関係が既に築けていることも強みだ。日生の参入で、疾病予防サービスの市場が拡大しそうだ。
日生が異業種に参入するのは、生保市場の成長が頭打ちになっているためだ。生保市場が抱える保障金額を示す個人の保有契約高は18年度で848兆円と、10年前に比べ100兆円近く減った。一方、健康への関心増から医療関連の保険需要は伸びが続き、新型コロナ禍で生保の代理店では相談も増えているという。
近年は各社とも健康増進につながる保険商品の拡販にも力を入れている。大手生保は日々の歩数や健康診断の結果に応じて保険料が変動する商品などを売り出しており、病気の予防につながるなどの付加価値とあわせて打ち出している。疾病予防関連事業はこうした保険との相乗効果は大きいとみる。
疾病予防関連のサービスはKDDIやディー・エヌ・エー(DeNA)など事業会社も相次いで参入している。それぞれ通信やIT(情報技術)で培ったノウハウを生かし、事業を拡大している。経済産業省のまとめによると、同サービスを含むヘルスケア産業の市場規模は2025年に約33兆円と2016年に比べて3割増える見通しだ。成長分野に進出し、収益力の強化を図る。最大手の日生が動き出すことで、国内でも同業他社が検討に乗り出しそうだ。