今般の新型コロナウイルス感染症に関し、2020年5月1日現在、「疾病を保障する保険」と「傷害を補償する保険」に関し、各保険会社から公表されている保険金の取扱いについて次の通り整理した。(全ての保険会社が同様の対応をしているものではない。)
1.疾病を保障する保険
疾病を保障する保険は、主として生命保険会社が販売している。
新型コロナウイルス感染症は、他の疾病と同様に疾病を保障する保険(医療保険、死亡保険等)の保険金支払対象となる(保険金が支払われる)。
例えば、新型コロナウイルスに感染し、医師の指示のもと入院した場合は、通常の疾病で入院した場合と同様、入院日数に応じて医療保険から入院給付金等が支払われる。
また、新型コロナウイルス感染症により死亡した場合は、死亡保険金が支払われる。
※宿泊施設や自宅療養への対応について
2020年4月2日、厚生労働省が、「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について(ガイドライン)」を公表したのを受けて、多くの保険会社では、医療機関が満床でホテルなどの臨時施設や自宅で入院と同等の治療を受けた場合にも、医師または医療機関の証明があれば入院給付金の支払い対象としている。
2.傷害を補償する保険
傷害保険は、傷害(ケガ)を補償する保険商品で(基本的に疾病(病気)は保障されない)、主として損害保険会社が販売している。
上記のとおり、新型コロナウイルス感染症は、疾病を保障する保険の保険金支払対象となるが、傷害保険の保険金支払対象とはならない。
一般的に損害保険会社の傷害保険普通保険約款(注)では、「急激かつ偶然な外来の事故」によりケガをした場合に保険金が支払われ、「病気」は保険金の支払い対象となっていない。
(注) 傷害保険普通保険約款(当保険会社の支払責任)
① 当保険会社は、保険証券記載の被保険者が急激かつ偶然な外来の事故によってその身体に被った傷害に対して、この約款に従い保険金(死亡保険金、後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金または通院保険金)を支払います。
② 前項の傷害には、身体外部から有毒ガスまたは有毒物質を偶然かつ一時に吸入、吸収または摂取したときに急激に生ずる中毒症状を含みます。ただし、継続的に吸入、吸収または摂取した結果生ずる中毒症状または細菌性食中毒およびウイルス性食中毒は含みません。
※特定感染症危険補償特約について
上記の通り、傷害保険普通保険約款で感染症については保険金支払いの対象になっていないが、特定感染症危険補償特約(注)を付帯することで、特定の感染症については保険金の支払い(後遺障害保険金、入院保険金、通院保険金)対象になる。
ただし、特定感染症危険補償特約では、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」における「一類感染症から三類感染症」を補償対象としており、新型コロナウイルス感染症は現在「指定感染症」の位置づけで、補償対象外となっていたが、現下の情勢を受け補償対象化を望む声が多く寄せられていた。
さらに、新型コロナウイルス感染症は、一類感染症または二類感染症と同程度の措置が講じられており、将来的には一類感染症または二類感染症等に位置付けることが予定されていた。
こうした状況を踏まえ、現在多くの保険会社で新型コロナウイルス感染症を補償対象とする商品改定が行われている(大手損害保険会社では既に同改定が実施され、2020年2月1日に遡って適用するとしている)。
(注) 特定感染症危険補償特約
一般的に 特定感染症危険補償特約では次のように規定されている。
特定感染症(※)を発病し、その直接の結果として発病の日からその日を含めて180日以内に、所定の後遺障害が生じた場合、入院した場合、通院した場合に、後遺障害保険金、入院保険金(180日限度)、通院保険金(180日以内の90日限度)をお支払いします。
(※)特定感染症とは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に規定する一類感染症、二類感染症または三類感染症をいいます。(2014年7月現在)
「一類感染症」…エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
「二類感染症」…急性灰白髄炎(ポリオ)、結核、ジフテリア、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ(H5N1)
「三類感染症」…コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症(O-157を含みます。)、腸チフス、パラチフス