民法の一部(債権関係の規定)が改正され、2020年4月1日から施行された。
債権関係の規定については、明治29年(1896年)に制定されたが、100年以上たった今、「民法の一部を改正する法律(債権法改正)」として初めて改正された。
今回の改正で、損害保険に大きく関わる部分は次の2つ。
❶契約期間中の約款変更が可能になる
❷法定利率の変更
❶契約期間中の約款変更が可能になる
今回の民法の改正において、約款を用いた取引に関するルールが新たに定められたが、その中で、以下に該当する場合には、事業者(企業)側が既存の契約も含めて、その約款の内容を変更できると規定された。(法第548条の4)
a.変更が顧客の一般の利益に適合する場合
b.変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合
原則として約款に基づき契約されている損害保険契約についても、改正民法で規定する上記の条件に該当する場合には、約款の内容が変更されることがある。
❷法定利率の変更
今回の民法の改正により、法定利率が5%から3%に改正された。
法定利率というのは、法律によって定められている利率のことをいう。当事者間で利率が決められていなかった場合に適用される。
また、法定利率は金利の情勢等に応じて3年ごとに見直されることとなった。
この法定利率の変更に伴い、法定利率をもとに算出している「ライプニッツ係数」(注)などの値が変更となる。
(注)「ライプニッツ係数」と支払保険金の額の関係
例えば、自動車保険の人身傷害保険では、将来の逸失利益などの計算にライプニッツ係数を使用している。逸失利益など将来にわたって発生する損害に対する全期間分の補償を保険金として一括で受け取った場合、その保険金を運用することにより毎年利息収入が得られるが、毎年発生する利息に相当する額を差し引いた保険金の額を算出するために使用される係数を「ライプニッツ係数」という。
法定利率が低いほど支払われる保険金は大きく、法定利率が高いほど保険金は小さくなる。
そのため、今回の法定利率の引き下げは、損害保険会社としては保険金支払額が増えることになり、保険料を引き上げる要因に繋がる可能性がある。