政府はトランプ米大統領が決めた鉄鋼・アルミニウムへの25%の追加関税をめぐり、政府が100%出資する日本貿易保険(NEXI)を通じてリスクに対応する。関税による費用の増加を理由に日本の製品が米側から契約破棄にあった場合、保険金支払いの対象とする。
政府は2月12日、日本企業を追加関税の適用除外とするよう米政府と交渉する一方、適用除外とならなかった場合の対策として、NEXIの保険金の対象とすることを明らかにした。
関税は品物を輸入する側が支払う。米国の鉄鋼ユーザーが買い手の場合、日本製品を輸入するコストが上がる。そのため、日本の鉄鋼メーカーや商社は、米国の買い手から契約を破棄されるリスクにさらされる。
NEXIは契約が破棄された場合などに、本来受け取るはずだった代金の一部を保険金として支払う補償を設ける。船積みができない場合や、輸送の遅れに伴う費用増加も補償の対象となる。
日本から米国への鉄鋼の輸出量は鉄鋼輸出全体の3~4%程度。金額としては年3000億円規模、アルミニウムの輸出は200億円規模だ。
日本製品には自動車向けなど代替品を米国内で調達できない高性能な製品もある。政府関係者からは「追加関税が実現したとしても、契約がすべて破棄されることは考えにくい」との声が上がる。
NEXIは日本政府が全額出資し、紛争や自然災害による取引の停止や代金の不払いなどで日本企業が受けた損失を補填する保険を手掛ける。現在の利用社数は1000社強あり、そのうち鉄鋼・アルミ輸出に関する商社などは20社ほどだ。
同社は2018年3月22日、第1次トランプ政権下で鉄鋼・アルミニウムに追加関税がかけられた際にも今回と同様の補償制度を設けたことがある。
予期できない関税の導入をリスクとしてみなすのは珍しい。米国による輸入制限措置は、企業の営業努力では免れることができないリスクとして補償対象に含めた。