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「保険料だけに頼らない」 損保大手、データで稼げ(7月25日 日経記事を中心に)

 損害保険大手は、ビッグデータで事故の防止や災害の被害軽減につながるサービスを提供し手数料収入を増やすなど、保険以外の事業を収益源に育てようとしている。

 損保業界は保険の自由化から25年程たち、業界を取り巻く環境が大きく変わり、先行きの危機感が高まるなか、収入の9割を占める保険料だけに頼らず新たな稼ぎ方に挑む。

 【先行きの危機感】

 国内市場は自動車保険が約5割と最も多い。事故の減少で個人向け自動車保険市場は40年までの四半世紀で約4割にまで縮小するともいわれている。また災害多発で火災保険も厳しく、22年度の大手4社合計の火災保険事業は2102億円の赤字と13年連続の赤字になった。

 【自由化以降の変遷】

 損保業界は戦後の旧大蔵省による護送船団行政の下で参入規制が敷かれ、安定成長の時代が続いた。1990年代の保険自由化で各社が保険料率を決められるようになり、商品の差別化などで収益を拡大してきた。

 更に2021年11月の保険業法改正で損保は保険以外の事業を展開できるようになった。改正前までは基本的に保険事業しか認められていなかったが、改定後は、地域の活性化や産業の生産性向上、持続可能な社会の構築に役立つサービスにも参入できるようになった。

 【損保保有データの活用と課題】

 損保が保有するデータは膨大だ。乗用車やバイク等の全車種の保有車両台数は2022年3月末時点で約8千万台で、自動車保険を付けている割合は8割程度と普及率は高い。社会インフラとして位置づけられる火災保険も契約数は2000万件程度に上る。社会のデジタル化に伴いデータとして得られる情報量は増えており、新事業を育てる余地は大きい。

 一方で損保大手のあるデータサイエンティストは「損保には膨大なデータが蓄積されているが、活用されているのは5~6割程度ではないか」と話す。データの種類や基準がばらばらで解析にも着手できず、まずはデータとして使える状態にすることから始めるケースが多いという。専門人材も足りず、あいおいニッセイが今年からデジタル人材に年収2000万円以上を提示するなど採用戦略の強化に乗り出した。

 【損害保険会社の取組事例】

 東京海上日動火災保険は、衛星画像を解析し水害が発生した際に浸水した深さを地図上で表示するシステムを開発し、2023年度中にも自治体に有償で提供する。復旧計画の策定などに使い災害時の迅速な復旧につなげる。サービスの使用料は自治体が求める情報の範囲などに応じて決める。東京海上は「今後はフィー(手数料)ビジネスを成長ドライバーに位置付けていく」という。

 損害保険ジャパンは、数百万件の交通事故を分析した統計データをタクシー事業者に販売し、事故が多い道路をタクシーが走行すると警告音が鳴るシステムを事業者と構築する。

 あいおいニッセイ同和損害保険は、自治体向けに交通事故の危険性が高い場所を地図上に可視化するサービスを有償で始める。

 三井住友海上火災保険は、2023年度から企業向けのリスクコンサルティング業務を拡大する。火災や自然災害による被害に関するあらゆる統計データを分析し、企業にとって最適な防災対策を提案する。これまで顧客企業に限られていたが、法改正で保険契約のない顧客にも提供できるようになった。

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