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<再保険の動向>損保の再保険料、来年高騰(2022年12月28日 日経記事を中心に)

損害保険会社が巨額の保険金の支払いに備えて払っている再保険料が高騰する見通しだ。

自然災害関連の主な再保険契約は米国で毎年1月、日本で4月に更改する。米国の自然災害関連の2023年の再保険料は「上昇幅が2022年(10~15%)よりも大きくなる」(保険関係者)との声が多い。29%上昇すれば直近ピークの2007年に並ぶ。

急騰が想定される理由は主に3つある。

① まず、自然災害の大規模化だ。2022年も大型のハリケーンが米国に上陸し、甚大な被害が出た。保険損害は最大10兆円と1900年以降で過去2番目の規模になるとの試算もある。

② 世界的なインフレも再保険料の上昇につながる。米保険仲介の日本法人、マーシュブローカージャパンによれば「建築資材や人件費の上昇で建物の修繕費用などがかさんでいる。復旧費用に対して保険金が不足しかねず、インフレによる補償リスクの拡大は再保険料の上昇要因にもなる。」と指摘する。

③ 最も注目される要因は、各国の金融引き締めだ。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が大幅利上げを続け、日銀も緩和縮小を決めた。再保険市場には再保険会社に加え、ファンドや年金基金などの機関投資家が参加している。機関投資家は国債や社債の利回りが改善していることから再保険投資から債券投資にシフトし始めた。英保険仲介のエーオンによると、世界の再保険市場の資金は2022年9月時点で前年末比17%減の5600億ドル(約75兆円)となり、2013年以来9年ぶりの低水準となった。リスクの引き受け手が減れば、その分だけ再保険料が上がりやすくなる。

これまでは災害が相次ぐ中でも、再保険料の伸びは抑えられていた。2018年は前年に米国でハリケーンが相次いで各社が大きな損害を受け、5割以上の上昇を見込んでいたが、結果はほぼ据え置きだった。リーマンショック後の金融緩和で、2010年頃からファンドや年金マネーが流入し、再保険料が上がりにくい構図が生まれていたためだ。保険リスクを証券化した金融商品「キャットボンド(大災害債)」は金融市場との関係が低いため、株式や債券以外の分散投資先となった。

だが、2022年に再保険料の上昇を抑えていた構図が一変した。大規模災害の多発で再保険のリスクが高まり、大災害債などを買う投資家が減った。各国の利上げに伴い国債や社債の投資妙味が高まり、保険商品に比べてリスクの少ない債券運用にシフトしたのだ。

日本国内の損保も事業環境は厳しい。大手4社(東京海上日動、損害保険ジャパン、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保)の火災保険事業は2021年度まで12年連続の赤字だ。2015年から2022年に保険料を3割引上げ、2022~2024年度の黒字化を見込んできた。

日本の自然災害関連の再保険契約は2023年4月に更改する。再保険会社は全世界のリスクを引受けながら各国損保と交渉しており「米国の自然災害関連の更改は先行指標になる。(大手損保幹部)」と警戒感が強い。再保険料の上昇は保険事業の収支が悪化する要因となる。家計や企業の保険料負担は一段と増える見込みだ。

 ▼再保険 地震やテロなど巨額の保険金の支払いが見込まれる保険について、保険会社が別の保険会社にリスクの一部を引き受けてもらう取引のこと。保険にさらに保険をかけるので「再保険」と呼ばれる。支払金額の大きな損害保険の場合、災害や事故に対する補償で損害保険会社の経営が不安定になりかねない。再保険を使うことで支払いリスクを抑える狙いがある。

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