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<ロシアによるウクライナへの軍事侵攻と損害保険②>英ロイズ保険組合、戦争リスクに十分対応(3月25日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版の記事を中心に)

ロイズはロシアのウクライナ侵攻によって大幅な損失が予想されると述べた。損失の規模がどのくらいになるかはまだはっきりしない。ロイズのジョン・ニール最高経営責任者(CEO)は、損失額は数十億ドルで、それに対応する十分な資本があると述べるにとどめた。確実なのは、航空や海運、与信、貿易政策などによる大量の請求が解決するのに何年もかかるということだ。

国家間の争いになった場合、保険業界は被害者リストの上位に入らないことを前例は示唆している。戦争保険は通常対象が特定され、7日前までの通告で契約を解除できる条項がある。保険会社は大規模な損失を避けるため、こうした条項を利用できる。報道によると、3月12日までに多くの保険会社がこれらを発動したようだ。今後の請求を巡る裁判では、日付が法的議論の対象になるだろう。

航空保険や海上保険にこうした特別条項が含まれているにもかかわらず、投資家の大きな不安は取り除かれていない。ロシアには約100億ドル相当の航空機が立ち往生している。ロシアは国が航空機を差し押さえることができる法律を制定した。ただ、再保険後の損失はそのごく一部で済む。黒海の港で船舶の運航ができなくなったことは、この地域で操業する海運会社が負うリスクと海上保険のコスト高騰を反映する可能性が高い。

再保険大手のスイス再保険によると、01年9月11日の米同時テロ以降、人災によって世界の保険会社の損失が年間100億ドルを超えたことはほとんどない。ロイズの中核的自己資本は60億ポンドで、十分に守られているようにみえる。より大きなリスクは、国家が主導するサイバー攻撃かもしれない。こうした攻撃は、ロシア発と特定することは難しい。そうなれば保険会社の請求に対する立場は脆弱になり、状況が一変するだろう。

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