AIG損害保険が3月9日から、黒海やアゾフ海のウクライナ領とロシア領を行き来する船舶が戦争による被害を受けた場合、外航貨物海上保険の補償対象外とすることがわかった。 ロシアによるウクライナ侵攻で同海域を運航するリスクが高まっているためとみられる。海上輸送の前提となる保険提供を止める動きが広がれば、ロシアでの事業継続は一段と難しくなる。すでに、契約の見直しを荷主に打診した。
今後は黒海やアゾフ海沿岸の両国領やウクライナ全域を発着する貨物について戦争による損害は補償しない。貨物海上保険自体の提供は続ける見通しで、戦争と無関係の事故による積み荷の損害に対しては従来通り保険金を支払う。
AIGが貨物海上保険の補償範囲を狭める背景には、米欧日によるロシアへの経済制裁の強化がある。損保会社が保険提供を停止する動きは、核開発を進める懸念があったイランへの制裁時にもあった。すでに黒海やアゾフ海域を航行する船舶は急減している。損保業界で航行リスクへの補償を制限する動きが広がれば、ロシアでの事業リスクは一段と高まる。
英ロイズ保険組合を中心とした英国の委員会が2月中旬、この海域を「リスクの高い地域」に指定したことも影響したとみられる。再保険市場が同海域を航行する船舶の海上保険の引き受けに慎重なことを受け、損保会社の間では同海域の海上保険料を引き上げる動きも出ている。