東京海上日動や損害保険ジャパンなど日本の損害保険各社は、ロシア向けの保険契約を停止する検討に入る。欧州保険最大手の独アリアンツがロシア関連の新規契約を止めるためだ。
独アリアンツは3月14日、ロシア関連の新規の保険引き受けを停止すると発表した。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた措置。米欧がロシアへの経済制裁を強めていることに歩調を合わせる。保険種目を限定せず、建物の損害を補償する火災保険や事故などに起因した操業停止による減益を補償する利益保険などすべての保険商品について新規契約を見合わせる。
国内損保はロシアに現地法人を置いていない。ロシアで事業を展開する日系企業はまずアリアンツなどロシアに進出している保険会社と契約したうえで、国内損保がその保険会社と再保険契約を締結。アリアンツなどから「再保険料」という名目で保険料を受け取る仕組みになっている。
保険提供先には日系の自動車メーカーなどが含まれるとみられる。アリアンツの撤退で、こうした保険を今後、新たに引き受けられなくなる。今後は既存の保険契約の有効性が焦点になる。新規契約の停止に伴い、既存契約も更新できなくなる恐れがある。仮に日系を含めた各国企業のロシアでの事業が無保険となれば、撤退を余儀なくされる可能性がある。
一方、損保各社は3月19日、国際貿易で行き来する船体を補償する船舶保険について高めの保険料を設定する「除外水域」の対象を広げる。従来はウクライナ周辺の黒海やアゾフ海としたが、クリミア半島周辺やロシアやウクライナの一部河川を加える。軍事行動に伴う被害でも補償を受けるには、主契約とは別に「戦争保険」に加入する必要がある。すでに同海域を航行する船舶は減っているが、一段と航行コストが高まる。除外水域を航行する際は事前に保険会社に通知し、補償条件や保険料を確認する必要がある。