表明保証保険(M&A保険)は、欧米を中心に、取引の安全を高める手段として急速に広まり、今や海外M&A取引では必ず検討されるものとなっている。
一方、国内M&A取引では、英語対応等の問題から普及が遅れていたが、近年、日本国内において中小企業を中心とした事業承継や大企業によるベンチャー企業の買収などが増加する一方で、中小企業M&Aにおける環境整備が課題となっていた。
とりわけ経営者の高齢化に伴う後継者不在の問題や、新型コロナウィルスによる中小経営への打撃により、倒産・廃業の回避と生産性向上の必要性は喫緊の課題である。
このように、中小企業M&Aは増加傾向にあるが、費用が限られる小規模M&Aについては十分なデューデリジェンスが実施されず、高いリスクを抱えたままM&Aが実行されるケースが少なくない。こうした状況を背景に、近年、損保大手が国内M&A用表明保証保険商品を積極的に販売推進している。
あいおいニッセイ同和、社会保険労務士法人アウルス、マーブルの3社は、国内M&A取引を推進するため、M&A労務デューデリジェンスにおいて、労務リスクの補償に特化した商品付帯型の表明保証保険を開発し、2021年9月より販売を開始した。
働き方改革や人権意識の向上という昨今のトレンドを踏まえ、労働関係におけるリスク検証の重要性はより高まっており、今般、あいおいニッセイ同和が労務リスクに特化した表明保証保険を開発し、アウルス、マーブルが提供する小規模事業者向け労務デューデリジェンスサービスに組み込むことで、安心して小規模M&Aを実行できる仕組みを構築した。
SOMPOホールディングス傘下のSOMPOリスクマネジメントと損害保険ジャパンは、主に製造業のM&A時の土壌汚染リスクを分析するコンサルティングと保険サービスを展開する。買い手となる企業が引き継ぐ工場の土壌汚染リスクを評価し、建て替えが必要なときに土壌の処理費用の超過分を保険でカバーする。M&A時のリスク軽減につなげる狙いだ。
M&Aで用いられる表明保証保険では財務や法務などのリスクはカバーするが、土壌汚染は範囲に入らない。ただ近年、経営者の高齢化などで中小企業のM&Aが増え、顧客から土壌汚染リスクに関する問い合わせが増えているという。
東京海上日動は、2021年7月1日に全国商工会連合会、株式会社バトンズと、「中小・小規模 M&A の促進に関する包括連携協定」を締結した。
バトンズは、国内最大級の成約実績を誇る M&A 総合支援サービスを提供しており、バトンズが提供するデューデリジェンスサービスと東京海上日動の小規模 M&A 向け表明保証保険を組み合わせることで、M&A を取り巻くトラブルを減少させ、円滑な事業承継を支援するとしている。