東京海上日動は資産運用会社向けに、社員の事務的な過失やサイバー攻撃で損失が生じた際の機関投資家との和解金や弁護士費用を補償する保険を2021年10月に売り出す。
日本の資産運用会社の受託額は650兆円規模にのぼり、ハッキングや運用担当者の発注ミスに伴う損失リスクは大きい。年金など国民の暮らしに直接関わる運用資金の安全性を高める。
東京海上によると、資産運用会社の「オペレーショナルリスク」と呼ばれる業務遂行上のリスク全般をカバーする保険は国内損保で初めて。投資顧問会社など大手機関投資家やベンチャーキャピタル(VC)、プライベート・エクイティ(PE)ファンドなど運用会社すべてを対象とする。
補償するのは、運用会社のファンドマネジャーがあらかじめ投資家と決めたルールから外れて売買したり、誤発注で損失が出たりした場合の投資家との和解金や弁護士費用だ。
PEファンドが投資先の資産査定に不備があるとして賠償を請求された場合も補償する。
サイバー攻撃に伴う損失も補償する。運用会社は経営効率化のため少ない人数で運営しており、ITに精通した人材の確保は難しい。一方、運用商品の販売会社や証券の管理を担う信託銀行など外部とデータをやりとりする機会が多く、サイバー攻撃で損失を被るリスクは高い。
欧米では2000年ごろから普及し、現在は運用会社の7割が賠償責任保険を活用しているという。