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貿易保険の現状① 政府の発展途上国への支援で政府系の日本貿易保険(NEXI)の存在感が増大(2022年9月29日 日経新聞の記事を中心に)

 政府開発援助(ODA)による支援に限界があるなか、民間の投資や融資と貿易保険(注)を組み合わせた仕組みがアフリカなどで評価され始めた。今後も中国による大規模なインフラ投資と競っていく上で、省庁横断と官民連携による支援策を練っていく必要がある。

(注)貿易保険:貿易保険は民間の保険会社ではカバーしきれない企業の輸出や投資、融資などに伴う海外取引で生じる損失を補償する制度だ。日本ではNEXIが取引先の国・地域や企業の信用度などから保険料を設定する。信用度が低い国との貿易は保険料が高くなり、企業の負担は重くなる。

 「日本のエジプト支援の経緯について、我々にも話を聞かせて欲しい」。最近、NEXI幹部のもとにアジアのある国から連絡が来た。関心を示されたのは今春、日本がエジプトを支援した際のスキームだ。

 エジプトが総額600億円の円建て債券(サムライ債)を発行し、日本の機関投資家40社以上が参画した。償還できない場合に備えた保証を三井住友銀行が担い、政府系のNEXIがこれに貿易保険をつけた。エジプトは得た資金を新型コロナウィルスワクチンの購入資金や環境対応車への転換に向けた補助金に充てる。

 エジプトなどアフリカ諸国向けの投資や融資は他地域と比べてリスクが高く、消極的になる企業も多い。NEXIの貿易保険がつけば政変などで事業が頓挫したとしても補償され、打撃は少なくて済む。日本政府がNEXIを通じて関与することで、エジプト初のサムライ債発行につながった。

 エジプトはウクライナからの穀物輸入が滞るなど経済が苦境にある。日本政府はNEXIの仕組みを利用すれば、民間資金を使った「顔が見える」経済協力ができると考えた。

 途上国支援のこれまでの主役は外務省のODAだった。ただその存在感は年々低下が指摘される。

 経済発展が進み、資金需要が増えるとODAだけでカバーするのは一層厳しくなる。NEXIの保険を呼び水に民間資金を取り込み、全体の支援額を上積みしていく必要がある。NEXIは20年、政府が示したインフラ輸出戦略などの方針を受け、脱炭素やデジタル化などに関わる案件を積極的に後押しする「LEAD」計画を打ち出した。以降は同計画で計26億ドル規模の貿易保険を引受けているとみられる。

 政府はエジプトのサムライ債発行のような事例を、アフリカだけでなくアジアや中南米などにも展開できないか検討する。

 NEXIには国が全額出資する。外交協力を重んじるあまり案件のリスク管理がおろそかにならないよう、事前の綿密な精査も不可欠となる。

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