多くの大企業は企業内代理店を通して保険を契約している。OBの受け皿になっている代理店もあり、保険知識に乏しい場合も多い。契約は損保会社に任せっきりで、金融庁の有識者会議では企業内代理店の実務能力を疑問視する指摘があった。
企業と損保の不適切な関係の媒介役となっていたのが企業内代理店だった。一連の不正問題を受け、企業保険における長年の慣行はリセットされる。代理店事業を外部に譲渡し、実務能力が高い代理店に保険を手配してもらうことを検討する企業が出てきた。
存在感を高めているのがメガバンク系の代理店だ。代表格が三菱UFJ銀行の親密先のエムエスティ保険サービス、三井住友銀行の銀泉、みずほ銀行の共立、トータル保険サービス、ヒューリック保険サービスの大手5社だ。
銀行系代理店の幹部は「企業内代理店を使い続けることに課題意識を持つ企業からの相談が急激に増えている」と話す。これまでワコールホールディングスや富士通グループもメガバンク系の代理店に譲渡した。ある総合機械商社は23年に三菱系のエムエスティに保険代理事業を譲渡した。
親会社への保険手配を制限する規制の厳格化で、企業内代理店は存在意義を強く問われる。取扱保険料のうち50%以上が親会社と契約を結んでいる場合、企業内代理店は損保からの委託契約を解除される。
保険業法改正に向けて24年に開いた金融審議会では、規制の対象を親会社だけではなくグループ会社に広げる方針を示した。金融庁によると、規制が厳しくなれば損保4社の委託先の企業内代理店173社のうち4割が委託解除に該当するという。
代理店の実務能力を向上する動きも活発だ。三井物産インシュアランス・ホールディングスは、内部監査体制の構築を支援するサービスを始めた。ガバナンスの強化はどの代理店も求められるが、中小規模の代理店では人手不足などで独自に体制をつくるのが難しかった。
日本損害保険協会も3月に代理店が自立した業務運営ができているかを評価する基準をつくった。損保各社はこの基準に代理店が到達できるよう指導する。損保職員が代理店と不適切になれ合わないよう、近く過度な便宜供与を防止するガイドラインを策定する見込みだ。
身売りに動くか、実務能力の向上に取り組むか。企業によって最適な選択は異なるものの、企業内代理店を巡る動きが加速していくことは間違いない。