1.主要損保
❶東京海上ホールディングス
政策株式売却益の増加や大規模な自然災害の減少により最高益を更新。連結純利益が初めて1兆円を超えた。北米の主要子会社は保険引き受けの拡大により増益。26年3月期は政策株式の売却益の減少により減益になる公算。
➋MS&ADインシュアランスグループホールディングス
政策株式売却益や利息などの収入の増加により最高益を更新。北米の保険販売や資産運用事業も増益。自然災害の減少や保険料の引き上げにより火災保険の収支も改善。26年3月期は減益の見込み。
➌SOMPOホールディングス
政策保有株式の売却益や海外保険事業の資産運用益の増加により過去最高益を更新。自然災害の減少による火災保険の収支改善や円安が増益を後押しした。国内の損保事業は赤字。国際会計基準を導入したため26年3月期の業績は25年3月期業績と比較できない。
2.主要生保
主要14社・グループのうち、5社が過去最高益を更新した。金利上昇や株高で運用益が拡大し業績をけん引した。25年度はトランプ米政権の関税政策などで運用環境の悪化が見込まれ、新型コロナウイルス禍以降落ち込んでいる保険販売の回復が急務となる。
14社・グループの本業のもうけを示す基礎利益は、運用益の拡大を主要因に前の期比12%増の4兆1000億円だった。
日本生命保険はグループ基礎利益が32%増の1兆109億円と初めて1兆円を超えた。
第一生命ホールディングス(HD)も同社が重視するグループ修正利益が38%増の4395億円と過去最高。全体で8社が増益だった。
日本経済新聞が主要12社・グループから回答を得たアンケートによると、運用で得られる利差益は61%増の1兆7000億円だった(21年度以降で最高)。
明治安田生命保険の中村篤志副社長は26日の記者会見で「年度を通して、円安や金利上昇など生保にとって好ましい環境が続いた」と振り返った。
もっとも世界景気の先行きには不透明感が増し、25年度は運用環境が悪化する懸念がくすぶる。
運用益の反動減を見据え収益の両輪となる保険営業の重みが増すなか、医療保険や介護保険など主力の保障性の商品は苦戦が続く。24年度の保障性商品の新契約年換算保険料は約4500億円と、前の期比1%増にとどまり、コロナ禍前の19年度未満の水準だ。
主力としてきた営業職員の販売力回復が課題だ。24年度の営業職員経由の新契約年換算保険料は約5400億円だった。19年度の約6500億円から17%減った。コロナ禍以降対面での保険営業が難しくなっているほか人材獲得競争も激化しており、営業職員による保険販売は減少傾向が続く。
銀行や代理店経由での販売にも逆風が吹く。代理店での不適切な保険販売が露呈した損害保険業界に続き、生命保険業界でも代理店への出向者による情報漏洩が確認された。すでに日本生命も26年度以降に原則代理店出向をなくすと表明したほか、26日には明治安田生命も出向の縮小方針を明かした。販売支援を担う出向者が減少すれば、代理店経由での保険販売にも影響がでかねない。
金利上昇で保有する国債の含み損も拡大している。13社・グループの国債の含み損は24年度末時点で16兆8500億円と、23年度末の3兆8000億円から膨らみ過去最大となった。生保は債券の長期保有を前提に運用しており足元の影響は限定的だが、運用利回りの向上のためには債券の入れ替えが必要になる。